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特許制度のブラックハックは可能か

これまで何回も、特許制度は公正公平だ、と述べてきました。こことか。

しかし、何らかの不正が行われたことは一度もない、とはいいきれません。上部組織とか政治家から圧力を受けて…といったことが、ひょっとしてあったかもしれません。仮にそんなことができるとして、どういった不正が実際にありうるか、を考えてみました。日頃からここでは適法な範囲内での特許制度のハックを推進していますが、ブラックハックの可能性について考えてみようというわけです。

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特許等の審査の経過においては、現在では、実体審査の判断にかかわる拒絶理由通知等の書類は、原則としてすべてJ-PlatPatで公開されているはずです。なので、1度発送された拒絶理由通知に対して、内容をねじ曲げたり改竄したりするよう、仮にどこかから圧力がかかったとしても、これらの書類の公開後はあからさまなことはできないでしょう。また、明細書等の当初出願書類は出願から18カ月経過後に出願公開されますが、ほどなくしてGoogle PatentsやPatentscope等のいくつものアーカイブに転載されます。ですので改竄は事実上不可能です。これらや拒絶理由通知書は、出願公開されている特許出願の場合、発送から1週間以内に公開されます。未公開の出願に対する拒絶理由通知書なら当面は未公開です。それらの公開前なら、もみ消しや改竄はできなくはないかもしれません。でも、もしやろうとすると、審査部だけでなく、普及支援課とか公報の担当部署も抑えつけなければならず、庁全体を巻き込む必要がありそうなので、相当大がかりになります。現実には、よっぽどの実力者でも難しいんじゃないでしょうかねえ。仮に全部制圧できたとしても、けっこう多くの関係者の知るところとなりそうです。そうなると、いつかどこからかリークされるリスク考えたら、そんなことしないで正攻法で攻めた方がよほどましです。なので、いったん拒絶理由通知が打たれてしまったら、口利きで「ダメだっていわれたが、どうにか特許にできないか」というのは、まず無理でしょう。

期限徒過とか、実体審査の前の形式審査で引っかかるような落ち度があったとしても、同様に厳しそうです。

もしできるとしたら、拒絶理由通知の発送(起案)前に、担当審査官か直属の上司に直接コンタクトして、新規性・進歩性等の拒絶理由(先行発明)に気づかなかったことにしてもらう、というあたりでしょうか。ただ、審査中の検索動作のログが残るらしいですし、出願公開後の案件であれば文献のサーチが外注なので、やはり内々でごまかすのは困難になります。その出願にとって不利な文献があった場合、見つからなかった、は通らないので、検討の結果拒絶理由ではないと判断したということにする、と判断の幅の中で逃げるか、サーチ段階で手を抜いてひっかからないようにしてもらうくらいでしょうか。でも、審査結果が出る前に、この特許を通せと圧力かけるなんて、国の機関の出願であってどうしても特許にしたいというようなケースくらいしかなさそうです。だったら出願前に各部署間で十分協議して、そんな工作しなくても特許されるような出願内容にするでしょう。そういえば、特許庁長官が出願人で特許庁が審査する、という特許出願があり、拒絶理由通知がなく一発特許査定されていましたが、上記くらいのことはやっているかもしれません。発明者は7人、全員特許庁職員のようですが、担当審査官をこれらの発明者や関係者に接触させないことは可能でしょうし、別にわざわざ違法にやるまでもありません。代理人弁理士が6人もついてますし、公正にやってるとしか考えられません。ちなみに、この特許にはベス●ライ●ンス株式会社という会社が異議申立していますが、何も主張できなかったらしく却下されています。ベ●トラ●センス社は商標出願での大量荒業ハック(最盛期には年間1万件以上!)で有名な知財ハッカーです。さすがハッカーとしてこの案件は見逃せなかった模様です。

あとは、未公開の出願情報を競合他社に漏洩するとかでしょうか。ないとはいえませんが、個別の出願が庁全体の信頼性を引き換えにするほど重要だという事態は想像できないので、組織ぐるみでそれをやるとは考えられません。あっても職員個人の犯罪ですから、特許庁や特許制度の公正性とは別の話です。

成果づくりのため特許出願件数を水増し…はぁ?です。だいたい出願公開されたらたちどころにバレます。会計ごまかしても、独立採算制の特別会計なので意味なし。結局のところ、特許庁の場合、行政過程をねじ曲げたり文書を改竄したりするほどの動機となるものがありそうもないのです。利権がない、ともいえるでしょうか。

というわけで、特許庁や特許制度へのブラックハックはほとんどやりようがない、それらは公正であると見てほぼまちがいなさそう、が結論です。

カテゴリー: 知財

1件のコメント

  1. […] 前回記事の余談ですが、特許庁の不祥事といえば、10年以上前に、基幹システム再構築に絡むN社からの贈収賄というのがありました。そのすぐ後に、そのシステム開発を受注したT社が途中で投げ出して計画が頓挫し数十億が無駄になったということもありました。事件の詳細はわからないので深くは立ち入りませんが、個々の審査にかかわる不正というわけではないので、前回の趣旨には変更はありません。 […]

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