しばらく前ですが、またまた特許が登録・公開されました。
ただ、この技術を実施しないことは確定しています。現状ではこの技術での量産が難しい、というのもあります。あとから判明したのです。
しかし、それより大きいのが、仮にこの加工を実現できたとしても、期待したような効果は得られない、とわかってしまったということです。
もし魅力ある製品になりそうな見込みがわずかでもあれば、これまでなかった製品であることと、その製造販売を独占できることは確定しているわけですから、どうにか実現できるよう、もうちょっとあがきます。
でも、それまでにあったものをしのぐような価値を得られないなら、あがくだけ無駄です。もともと、この技術はアクリル関連の最初の特許の技術、カメレオンカラーを改良するためのものでした。この技術の意匠効果は高く、現在の製品群でも最も評判がよかったりします。でも、残念なことに耐光性が低く、すぐ色褪せてしまうのです。これはサイン用途としては致命的です。低額な一時用途にするにはコストがかかりすぎます。
この欠陥を克服しようと数年にわたり格闘してきました。まさしく特許制度が目的とする累積的進歩です、うまくいったなら。でも、思いつく限りのことをやってもどうにもならず、代替手段でさえ障壁が高く、その解決策の一つが今回の特許でした。しかしアイディアを思いつくまではいいのですが、実際の加工は困難で、それを打開しようとするとそこだけをフレームアップすることになります。そして製品としての価値の乏しさに目をつぶってしまい、あるいはそのうち解決できると思ってしまうのです。
一歩距離を置いて冷静に見てようやく、何だこれつまんない、となるのですが、そこまでずいぶん時間を無駄にしました。別の方法も思いつき、こちらは実現可能かもしれず、出願中の特許明細書には入れてあります。でも、これが仮にうまくいったとしても、元の技術での輝きは出せないのです。今世の中にある技術と素材の組み合わせでは、何をどうやっても無理。あきらめました。
このあきらめから、さらに二転三転を経て、今のグリッターサインが生まれています。この意味で、グリッターサインは蹉跌の産物なのです。
グリッターサインについても特許出願していましたが、ひとつめの発明は厳しい雲行きです。審査状況としても、製品の力としても。ふたつめの発明を出願後、製品としてうまくいきそうな手ごたえを得て、それに合わせて特許の要である請求の範囲を補正し、審査請求しました。
根拠が不明確な話ですが、特許のうち利用されているのは半分ほどといわれています。出願のみで審査請求せずに放棄された特許出願や、途中で維持されず抹消された特許を考えると、実際に使われている特許はほんの一握りという印象です。それほど、技術としての新しさと、製品の価値を結びつけるのは容易ではないということです。
オリジナルな技術ということでは、自分のポテンシャルをだいたい出し切った気がしています。特許についても、一時期の熱意はもうさめています。多少は地に足がついたということでもあるのでしょうか。あとは、とにかく事業としての地固めです。
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