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特許とweb検索、独創と競争

特許からwebサイト構築に関心が移りつつあります。

どちらも全部自力で行うという点で共通しますが、web制作関連の情報は基本的に公開されていて、アクセスのしやすさはともかく、その気になって調べればたいていのことはわかるのに対し、特許関連の情報は閉じられているか有料で、素人が集めるには限界がある、というところが異なります。特許庁は官庁の中でも最も情報公開を進めており、特許制度に関する一般的な情報はほとんどweb上で得られますが、特許取得のためのノウハウや個別の案件でどう判断すべきかとなると話は別です。

また、web制作は、試行錯誤して手探りで覚えていくにも、テストの結果が即座に確認できてタイムラグがほぼないのですが、特許の方は、早期審査請求しても一応の結果が出るまで3カ月かかり、場合によってはやり直しがきかないこともあるため、繰返しで練度を上げていくのは本業でもないと困難です。

webは独力である程度覚えられても、特許の方は経験者から経験で得た知見を受け継いでショートカットする、という本来あるべき学習の手続を踏まないと、無駄が多すぎます。実際、webの方は8年前に自社サイトを制作した時からすべて自力ですが、特許では、特許庁や弁理士会の無料相談に何度も質問したり、作成した書類を弁理士にレビューしてもらったりで(出願の代理を依頼し、明細書の下書きを手直しして出願書類にしてもらったのは2回、書類へのコメントを依頼したのは5回、それぞれでたいてい複数回見てもらってます)、自力とはいえそれなりに専門家による軌道修正を受けています。

特許については、もちろんまだまだ素人の域を出ませんが、自分の発明の自国内での権利化に必要な範囲のことはだいたいこなせるようになったと思っています。特許になるかどうかの見きわめもある程度つけられるようになってきました。もう1件出願する予定ですが、アクリルについては思いつくアイディアはあらかた出し切ったという感触もあり、たいへん不遜な言い方ではありますが、ほぼやりつくして攻略したかなという印象です。特許は道具としては強力でおもしろい武器ですし、それぞれの産業分野で幹を伸ばし枝葉を広げる種にはなりうるものですが、特許のシステムだけでは広がりはなさそうです。飽きっぽいので、こうなると興味が薄れてしまいます。

webのほうも、必要な範囲をDIYでこなすという程度で、所詮余技の域ではあります。製造技術では特許を数本取得して、価値はともかくひとまずオリジナルなものを打ち立てたと言えますが、webの分野でそのようにオリジナリティを確立できるとも思っていませんし、本業がおろそかになるほど打ち込む気もありません(特許の方は、本末転倒なことに、本業の進行が1年以上遅れるほどのめり込みました)。なのでPHPも習得せずにCSSでいじれる範囲内でWordPressのテーマをカスタマイズし、プラグインで拡張する程度です。

とはいえ、意図したとおりの表示や動作が出力されると、物のしかけを組み立てて狙った反応が返ってきた時と同様の昂揚や満足感があります。Illustratorでの作画を誰の指示でもなく好きなように行えて、作業としてはなかなか楽しいものです。

そして、特許庁からの発送書類の受け取りと並んで、毎日見るのを楽しみにしているのが、Google Search Consoleの「検索パフォーマンス」に表示される、Google検索ページ内の掲載順位です。

9月にhttps://acryshine.comを公開してから、これぞという検索キーワードで全く引っかからず、この世界の競争の激しさにおののき落胆していました。 Google Search Console では100位以下だと検索順位圏外になるようですが、検索ページでより下位の「最も的確な検索結果を表示するために、上の 123 件と似たページは除外されています」となるところまで進んでも出てこず、さらに下でも見つからないのです。有象無象のページが上位にあるのに。

ところが、3カ月という時間の経過のためか、トップページに注文フォームを設置したからか、SEOの内部施策を進めたせいか、検索結果の下の方に表れるようになり、先月末ごろから日々順位が上がってきました。このままいけば来年には1ページ目に入るかも、と期待したのも束の間、また表示されなくなってしまいました。あせっていたところ、Google Search Consoleから「モバイルユーザビリティ」に問題があると難癖つけられました。曰く「テキストが小さすぎて読めません」等々。支障あるとは思えませんが、直さないとはねられるので、アリバイ的に修正して検証させ、これでまた上昇するかと思いきやまた伸び悩み、今度は別のページで同じお小言を食らい、そのせいかまた表示されなくなりました。いったいどういうしくみなのかさっぱりわかりません。

検索パフォーマンスは2日遅れで反映されるので、当日の検索結果とはズレていることもあり、中身がどうなっているのかわからなのでやきもきします。特許なら審査基準が公開されていて、どうすれば特許になるのか、少なくとも表向きは対応の仕方が明かされています。Googleは、評価されるページ作りのための指針を示してはいますが、おおざっぱな理念を示しているにすぎません。実際の検索結果を定めるアルゴリズム等はブラックボックスであり、SEO業者なんかが群盲象を撫でているありさまです。

ただ、特許の審査でも、審査官によって審査基準の適用の案配がまちまちであり、おおまかな方向が公開されているだけで内部処理は秘匿されている、という意味では、Googleと根本的には一緒で、程度の差にすぎないとも言えなくもないかもしれません。

しかし、特許の場合、審査の公正性を実現するためにできる限り審査をフォーマット化しその仕様を透明化してはいるものの、実際の審査は人間が行うためにどうしても属人的要素に起因するバラツキが残ってしまう、ということでしょう。公正公平な制度設計と、そのしくみの公開について、特許庁は可能な範囲で行っていると思います。ところが、Google検索の順位づけ等は基本的に自動で行われていて人為的偶発性が介在する余地はありません。彼らは内部構造を意図的に隠しているわけです。WordPressによるサイト構築に関する情報はオープンですが、ネット検索についてはGoogle1社がほぼ独占し、どこぞの神様のようにすべてを意のままに動かし、時に容赦なく罰を与えますが、その理由もろくすっぽ教えてくれません。

そうではあっても、人脈も名声も持たざる者が物を売って利益を上げるための手段は、知的財産権(主に特許と意匠登録)とGoogle検索の上位表示以外にありません。どちらも、建前としては、誰でも無条件に参加機会があり公平です。また、元手がなくても、ある程度の能力と時間があればやりようがあります。それら以外でできるのは、金にあかせた広告か運まかせくらいです(ネットモール等の大手プラットフォーム内で上位を狙っても、結局価格競争に巻き込まれるので、利益を削って勝つしかなく、負けも同然です)。知的財産権の方はオリジナリティの追求であって、検索上位は競合相手より優位に立つことです。つまり、生存戦略の2つの型、「他がやっていないことをやる」と「同じ尺度上での競争に打ち勝つ」にそれぞれ対応します。私はもうまちがいなく前者に向いており、後者は苦手です。ただ、GoogleへのSEOは機械相手であって、必要なのは対人的な営業能力とは別の資質ですし、そこらの閉じたジャンルの仲間うちの評価での順位争いよりははるかに公正公平ですから、ある程度は戦えるかもしれません。

最後は、特許に注いだ熱量をwebに対しても投入できるかどうか、にかかっているような気がします。こうやってブログを再開したのも、ひょっとしてGoogle様のおほめにあずかれるかも、という下心からでもあります。

カテゴリー: web 知財

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