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【特許】登録2件

現在準備中の製品の根幹をなす発明に係る2件の特許登録が公開されました。きれいに連番です。

特許第6748800号

特許第6748799号

下の方はしくじって請求項1に余計な限定が多いのですが、あとで権利範囲をちょっとずらしてとりなおす予定。特許証は先週届いています。半分趣味の特許も同じタイミングで公開されました。

これで晴れて情報解禁、準備していた商品webを初公開…のつもりだったのですが、事業内容が変わってきてしまい、試作品の製作や撮影から全部やりなおすことにしましたので、当面お預けです。「テック系ベンチャー」とか「スタートアップ」とかいう方面の用語に倣えば「ピボット」ってやつです。7年前に株式会社の方を設立してから何度目か。商標登録出願もやりなおし。無駄になった特許・商標登録・独自ドメインも数知れず。

でも、上の2件の特許は今も中核技術です。今のところは、ですが…

他社が類似の製品を実施しようと考えたとしても、片方だけでも、現状では回避策は考えられません。現状では…

この2件の権利範囲を含む10数件分の発明をつめこんだ特許出願を、公開の前日(特許公報の発行は公開日の0時過ぎに確認しましたがその2時間ほど前)に行いました。上の2件に関連する権利範囲については、公開日より前の出願でないと、新規性を失ってしまい(自分の前の特許が公開されたことによって公知技術になったとみなされる)、意味がないのです。上の2件の特許公報発行予定日を何度も確認し、期限までぎりぎりまで粘って、商用明細書チェッカー(デモ版)を2つ使い、可能な限り気を配って出願書類を作成しました。

前の一連の出願で、優先権主張出願(前の出願の出願日に乗っかる)をすると、出願公開が出願日から18カ月ではなく、前の出願の出願日から18カ月になってしまう、前の出願を取下げても同じ、ということを知らず、予期しないタイミングで出願が公開されてしまい痛い目を見た、というのに懲りたあまり、今回も、何か見落としていて、もう前の出願が公開されているんじゃないか、この出願が無駄になっているのでは、へたこいて今日出願できなかったらどうしよう、などと気をもみました。だったらもっと余裕もって出願すればいいのですが、こういう性分でしてね。

特許公報をダウンロードし、発行日がこの出願の提出日の翌日であることを確認しました(早期審査なので出願から18カ月後の出願公開はまだ先です)。上のj-platpatでは17時頃にようやくアップされました。特許庁本体による公報発行からはタイムラグがあるのですね。

今回の明細書(公開はまだ先)は、思いつく限りの実施形態を満載した畢生の大作です。とはいっても、肝心のクレーム部分は手抜きです。あとから、事業の方向の変更に応じて補正するつもりでしたから。でも11件分のクレーム候補を練りこんでありますから、それを移すだけです。この出願書類はクレームの出来(発明の内容ではなくて言い回し)についてはまだまだだろうと思います。それに外国出願対応では穴がありそうですし、権利行使の面でも弱いところがあるかもしれません。特許制度の理解のうえでは、所詮シロートの域を出ないものだと思います。でも、技術文書としては、プロの弁理士にはちょっと書けない水準に達していると自負しています。

プロと非プロの違いは何か。利潤を上げる必要の有無です。写真撮影のプロの職域は年々狭まっているようですが、特にその勢いが激しいのが風景写真でしょう。前世紀終わりごろには、少なくともフリーランスの写真家は風景写真撮影で生計を立てるのは難しいと聞きました。この時点で、アマチュアでもトップレベルなら技術的にプロに劣らなくなります。その後デジタル化が進んでからは、画質は機材でほぼ決まってしまいますから、採算度外視で最新最高のカメラを買えるアマチュアに、プロは苦戦を強いられます。照明などの撮影テクニックを要する分野では、それでもプロの優位が続きますが、風景撮影等では、よほど特殊な撮影地でもない限り、プロは太刀打ちできなくなります。アマチュア、特にリタイアして時間がありあまっている層は、たとえば高山植物の開花とか、富士山の気象条件とか、とにかく探し回るとか、最高の撮影条件に立ち会うために時間を惜しまないわけです。もはや時間で食っている撮影専業者の出る幕ではありません。写真は視点次第?関係ないです。風景写真のようなジャンルでは「いい写真」のフォーマットが完成されきっているので、落としどころはだいたい決まってます。一定以上のレベルなら、投入した時間で質が決まる世界です。

特許明細書も同じことです。プロの特許弁理士が、発明者から発明について聞き取りを行い、その情報に基づいて明細書等を作成し、特許出願及び取得までの業務を代理することで報酬を得る職業である限り、必ず時間に縛られます。ありったけの時間を突っ込めて、しかもその発明については最も詳しいはずの非プロ本人出願者に対して、プロ弁理士に優位な点があるとすれば、地頭と、スキルや経験的蓄積です。後者については後述しますが、非プロが30倍の時間をつぎ込んだら、プロがIQで50上だったとしても、プロの勝ち目はないでしょう。優にそのくらいの時間を、今回は投入しています。能力が2倍でも常に2倍の仕事量を稼げるとは限らず、調べごとにはどうしても一定の時間をとられるというように、能力と効率とは必ずしも比例しないということもあります。今回とアマチュア写真家との共通点は、自発性です。自発性やら思い入れは必ずしも有利に働かず、足を引っ張ることも多いですが、それでも、圧倒的な時間を呼び込みます。今回の出願を、思い込みに振り回された的外れなものとは考えにくいことは、上の2件の特許登録が示す通りです。

発明者自身が明細書を書いている特許はたくさんありますし(Canonとか)、その中には今回の明細書をしのぐものもごろごろ転がってるでしょう。そして、そのような発明者がたまたま弁理士でもある、という例も見ますが、それは上記の「プロの特許弁理士」の定義に反します。

今回、上の2件目の出願からはほぼ11カ月かけています(その前も含めれば数年になります)。最近の発明も含んでおり、期間はまちまちではありますが、自分が書いた明細書を、時間をおいて何回も読みなおすことで、客観的な視点で再検討することができます。これは、他人(それも極めて理解度が高い他人)にレビューしてもらうような効果をもたらします。前に述べたように、時間をかけることで、開発の進展に伴う技術のとらえ直しも反映できます。今回、発明者本人による出願の利点を、かなり活用できたと感じています。

おおざっぱに言うと、特許出願が特許庁に係属している期間中は、分割出願といって、細胞分裂のように、その出願のクローンを出願できます。これを繰り返すと、子・孫・曾孫と、(審査請求から査定までの期間にもよりますが)2年弱くらいの周期で同じ内容の出願を繰り返すことができます。今回の出願を元にして、これを行うつもりです。それが可能なだけの充分な数の発明をつめこんであります(一番上の特許の明細書でも、2件目の発明を含む3つの発明を盛りこんでます)。これをやって、最初の出願内容が代を超えて遺伝子のように受け継がれている期間中は、特許の権利範囲が確定していませんから、同業他社がそこに書いてある発明を実施してしまうと、権利行使を受けるおそれがあります。あとからみれば特許にならない陳腐な技術だったとしても、その期間中は、他社としてはこわくて手を出せないか、ライセンス契約せざるをえないわけです。

つまり、この国でこの技術領域に関しては、弊社が向後20年間、独走できる条件が整ったわけです。これに要した直接費用は庁費用のみで、代理人費用は一切かかってません。

その独走が果たして実るかは、また別の話です。

カテゴリー: 知財

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