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【特許】審決2回目!

来ました。「原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとする」。おそらく週末の17日に出ていたと思われますが、その日には受け取れず、本日晴れての発送です。

長い道のりでした。

本業が滞るほどの時間を取られましたし、このために10回以上出願・審査請求していて、弁理士に依頼しすんなり特許された場合と比較して、かえって費用がかかったかもしれません。にもかかわらず、この特許出願は自分で行うしかなかったし、これでよかったと考えています。なぜか。(1)発明をとことん考え抜いたことで、可能な範囲内では最良のかたちで権利化できた(2)出願から権利化までにおおよそ必要な実務スキルを獲得した(3)技術を突きつめ、別の技術に発展させることができた、からです。

(1)から。7年前、今回とは別の最初の特許出願で、弁理士に依頼してからも発明が進展し、内容を追加する必要がたびたび生じました。発明の進展だけでなく、明細書等の出願書類の初稿の納品後、明細書等の吟味に伴い改善案が続出し、これらを明細書に反映させ、さらにクレーム(特許の肝である特許請求の範囲)を再検討してもらい、となったわけです。代理人には多大な負担をかけ、反発もありました。出願後も追加内容が発生したため、国内優先権主張出願という補充的出願を行い、さらに国際出願時にも書き足しました。

出願時点で発明の内容が確定していて、その後の追加や変更の見込みがなければ、代理人に出願業務を依頼するのが賢明だと思います。ところが、出願時点で発明が発展途上段階で、技術開発と並行して出願準備を進める場合や、アイディアが次々に湧くような発明者の場合、明細書等の書き換えにいちいち代理人をつきあわせるのは現実的ではなく、二度手間となりかえって時間がかかります。自分で全部処理した方がよほど機動的です。この一連の特許出願を自分で行ったのは、費用の問題もありますが、こちらも大きな理由です。

今回の発明では、出願しつつ彫琢していき、審査結果が出るごとに対策を加えました。明細書等の書き換えは何回行ったかわかりませんが、数千とか数万回はやってきたと思います。結果、出願公開のタイミングの問題で直しようがなかった不満部分はあるものの、この発明についてはもう追加することはない、と思えるところまで書き尽くしました。専属の代理人でもなければ、この調子で振り回すのは無理です。

代理人が入っていたら、そんな際限のない修正に歯止めがかかって、時間を節約できたでしょう。これまでの出願書類には、やり過ぎもあったと思いますし、専門家からみれば無意味・過剰な修正も多かったと思います。弁理士に依頼していたら、もっと短期間で権利化できたかもしれません。

でも、発明の底の底まで沈潜していって、その核心を見据えた上で明細書を構築し、審査の進展に応じて今回のクレームに補正できるようなしかけをあらかじめ張りめぐらせておくのは難しかったと思います。もっと狭い権利範囲での穏当な決着を余儀なくされたことでしょう。そこにすら至らず、早期にお手上げとなった可能性も高いと思います。

今回、物の発明の独立項が3つで、製造方法の独立項も強力(製造方法の特許は一般に、侵害の立証が難しいとされているのですが、素人考えでは今回のは使えるのではないかと思っています)、引例(先行技術文献)を考えると、これ以上は望めないくらいのいい結果です。1件目の特許審決の方はもういらないくらいです。

(2)時間をかけたのですから、スキルがついて当たり前です。今回の明細書1本だけで、通常の明細書なら軽く5、6本分の分量と発明をつめこんであります。実際に物の発明だけで4本権利化できているわけで、けっこうな場数を踏むことになりました。ここまで追い込まれて、身銭切って自分の才能とか将来とか一切合財を賭けて争うのですから、特許実務がいやでも身につきます。

これだけ物事を習得したのは写真技術とプリプレス以来です(今回の発明に係る技術は習得ではなくみずからあみだしたものなので別枠)。哲学も批評も英語もさっぱりだったのは、ここまで必要に迫られなかったというだけのことです。向いてなかったかどうかは、今となってはどうでもいい話。今後の展望上は、英語運用能力より特許取得能力の方がはるかに有用です。ただ、全部我流なので、どこかに落とし穴があるかもしれません。また、所詮野武士ですから、条文や制度をくまなく正しく理解しているとはいえません。特許制度の改変の頻繁さもあり、今後も不断の情報収集とアップデートが必須です。

(3)今回の特許の技術は、売上に結びつけるにはいくつかのステップを要します。受注には実績等必要ですが、実績を揃えるのはそう生やさしいことではありません。そのステップを踏んでいこうと模索する中で、より事業化に近く、実績を増やしやすい応用発明にたどり着きました。この技術の方が実現可能性が高く、製品としても有望です。特許出願を弁理士に任せていたら、発明へのとりくみが受け身になり、ここまで技術を深彫りできなかったでしょう。周辺技術の開発も権利化を射程に入れつつ同時進行できるので、たいへん効率的かつ相乗的です。

さらに、特許調査スキルは未錬成だとはいえ、特許文献をざっと見る程度はできるので、出願前に、応用発明に係る製品が権利侵害を起こす恐れは少ないこと、類似商品がこれまでなかったであろうことも確認できます。

今回は即登録設定します。一山越えた、別の領野に到った、という心境です。

カテゴリー: 技術 知財

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